【タイ株 GULF】2026年8月〜9月ニュース|決算と今後の投資計画

はじめてのタイ株 タイ株

前回の記事「タイ株の銘柄選び|おすすめに頼らない探し方」で取り上げた、毎月見ている投資信託の月次レポート。2026年8月版では上位10銘柄の顔ぶれが変わっていました。

◼️参考にしていたファンドの上位10銘柄

わたしがタイの会社を探すときに参考にしたのが、アセアン・ギガトレンド株式ファンド(運用会社:アモーヴァ・アセットマネジメント)の月次レポートです。

月次レポートとは?

投資信託は、たくさんの人からお金を集めて、運用の専門家がまとめて株を買う仕組みです。その専門家が「いま何をいくら持っているか」を毎月まとめて公開しているのが月次レポートです。

組入上位10銘柄とは?

その投資信託の中で、運用会社が投資している金額の大きい順に10社を並べたリストが「組入上位10銘柄」です。プロが「いまこの会社に多く投資している」と考えている顔ぶれ、と読むことができます。月次レポートで公開されているので、無料で誰でも読めます。

アセアン・ギガトレンド株式ファンド組入上位10銘柄のスクリーンショット
アセアン・ギガトレンド株式ファンド 2026年8月の月次レポートより

タイの企業としては、7位にSTECON、10位にGULFがランクイン。2026年7月版では7位だったHANAが今回ランク外になりました。月次レポートでは、運用コメントも読むことができます。

運用コメント
運用コメントを抜粋したスクリーンショット。タイの電子部品メーカーを売却したと記載されている。

銘柄名は明記されていませんが、HANAを売却したのかもしれません。
ただ、上位10銘柄は毎月入れ替わります。11位に外れただけでもリストからは消えるので、HANAがダメになったという理由ではありません。実際、HANAの株価は8月に一時49バーツまで上がっています。

なぜ毎月入れ替わるの?
  • 運用の担当者が、実際に売ったり買ったりした
  • 売り買いしていなくても、株価が上がった銘柄の比率が自然に大きくなった(逆も同じ)
  • ファンド全体の資産が増減して、順位が入れ替わった

わたしは月次レポートを「プロの持ち物リストが変わったから、新しく入ってきた会社を調べてみよう」というきっかけとして使っています。

この記事では、新しく入ってきたGULFについて整理します。

GULF(ガルフ)ってどんな会社?

ひとことで言うと、タイで最大級の「電気をつくって売る会社」 です。そこから、今はデータセンターや携帯電話にまで手を広げています。
発電の部分だけを見ると、日本のJ-POWERと似た事業を行っています。

◼️会社の成り立ち

  • 2007、サーラット・ラタナワディ氏がGULF Holdingsを設立
  • 2011、タイ証券取引所(SET)に上場。証券コードはGULF
  • 2025/4/1、Intouch Holdings(インタッチ・ホールディングス)という会社と統合し、いまのGulf Development(ガルフ・デベロップメント)になりました
    (出典:The Company|GULF公式サイト)
創業者サーラット氏について

1994年にタイで発電事業への民間参入が自由化されたとき、29歳で会社を立ち上げたのが出発点だそうです。創業者のサーラット氏については、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの方がTHAIBIZに日本語で詳しく書いています。
(出典:THAIBIZ|2025-09)

◼️何で稼いでいる会社なのか

大きく4つです。

①発電(本業):ガス火力の大型発電所を軸に、太陽光・風力・水力まで手がけています。タイ国内の再生可能エネルギーだけで、契約済みの容量は4,497MW。うち2025年時点で1,532MWが動いています。

MW(メガワット)ってどれくらい?

発電所の大きさを表す単位で、1MW=100万ワットです。家庭用エアコン1台の消費電力がおおよそ1,000ワット前後なので、1MWは単純計算でエアコン約1,000台を同時に動かせる大きさ、というイメージです。 GULFのタイ国内の再エネだけで4,497MWですから、桁がまったく違うことが分かります。

②インフラ:LNGを調達・輸入するライセンスを取得(年間最大640万トンまで輸入可能)し、2025年1月に初めて自社でLNGを調達しました。LNGを輸入して自社の発電所ネットワークに天然ガスを供給するGulf LNGという名称で事業を展開しています。また、港湾(LNGを受け入れるターミナル)や高速道路の延伸事業も行っています。

LNGとは?

液化天然ガスのことで、天然ガスをマイナス162℃に冷却して液体にしたものです。ガス(気体)の状態ではパイプラインでつながった隣国にしか運べませんが、LNG(液体)にすることで、海を越えて日本やタイのような国へ「船(タンカー)で大量に運べる」ようになります。石炭や石油に比べて、燃やしたときの二酸化炭素や大気汚染物質が少ないエネルギーとされています。

③デジタル:データセンターとクラウド。後半で詳しく解説します。

データセンターとは?

インターネットのサービスを動かすコンピュータ(サーバー)を、何千台とまとめて置いておく建物のことです。

④通信:2025/4/1にIntouch Holdingsと統合したことで、AIS(エーアイエス)の筆頭株主となりました。AISはタイ最大の携帯電話会社で、契約数は5,150万件を超えます。

在タイの方なら、電気とスマホの両方でお世話になっている可能性が高い会社と考えると身近な企業と感じると思います


ニュース①:2026/8/6の決算 — 儲けが過去最高に

項目2026年4〜6月前年同期増減
コア利益123億3,200万バーツ71億100万バーツ+74%
売上502億9,400万バーツ406億1,700万バーツ+24%
EBITDA189億9,700万バーツ134億3,200万バーツ+41%
純利益124億4,600万バーツ638億7,100万バーツ▲80%

コア利益は過去最高でした。
(出典:Investor Update|GULF公式サイト,The Nation|2026-08-07)

「コア利益」とは?

その期だけたまたま発生した利益や損失(為替の差益、資産を売った利益など)を取り除いて、本業でどれだけ稼いだかを見やすくした数字です。第三者が客観的に「異常・例外」と判断したものをすべて排除する正常化利益と違って、コア利益は、企業側が「一時的」と判断した社内要因を差し引いたものと言われています。

EBITDA(イービットディーエー)」とは?

Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortizationの略で、日本語では「利払い前・税引き前・減価償却前利益」と訳されます。発電所やデータセンターのように最初に巨大な設備をつくる商売は、建てた費用を何年もかけて費用に振り分ける(=減価償却)ため、利益が実態より小さく見えます。EBITDAは、その前の段階で「現金がどれだけ入ってきているか(=純粋にビジネスでどれだけ儲けているか)」に近い数字を見るためのものさしです。

純利益が▲80%の理由

表のいちばん下、純利益だけが前年比マイナス80%になっています。これを見て「業績が悪化した」と読むと、逆になってしまいます。

理由は、前の年(2025/4〜2025/6)に一度きりの特別な利益が乗っていたからです。

先程のIntouchとの統合(2025/4/1)にともなって、会計上561億2,000万バーツの利益が計上されました。会社を1つにしたときの資産の評価替えによるもので、現金が入ってきたわけではありません。

前年の638億バーツから、この561億バーツを差し引くと約77億バーツ。今年の124億バーツと比べれば、むしろ増えていることが分かります。

ここが読み取れると、決算の記事はぐっと読みやすくなります。 「前年比で大きく減った/増えた」という数字を見たら、まず前の年に一度きりの何かがなかったかを疑う。会社が「コア利益」をわざわざ併記しているのは、このためです。

また、今回の数字には、次のような一度きりの利益も含まれています。読むときは頭の片隅に置いておきたいところです。

  • カシコン銀行(KBANK)からの配当:28億4,200万バーツ
  • ラオスのパクレイ水力発電の株式51%を、日本のJ-POWERに売却した利益:19億2,800万バーツ

なぜ良くなったのか①:発電所がよく動いた

ガス火力の大型発電所(IPP)の稼働率が上がりました。

発電所前年同期今回
ガルフ・シラチャ(GSRC)70%81%
ガルフ・プルアクデーン(GPD)75%77%
ガルフ・ウタイ5%46%
ガルフ・ノンセーン19%66%

また、太陽光と蓄電池の事業も伸びました。利益は4億200万バーツ(+153%)。動いている案件は12件・1,129MWで、前年の532MWから2倍以上になっています。

なぜ良くなったのか②:AISからの取り分が増えた

GULFはAIS株の40.44%を持っているので、AISの利益の一部が、GULFの利益として計上されます。

この取り分が45億4,900万バーツ(+31%)。コア利益123億バーツのうち、3分の1以上がAIS由来という計算になります。

つまり現在のGULFは、「発電会社」であると同時に「通信会社の大株主」でもあり、両方のビジネスが合わさった会社です。

ここは間違えやすいところです 「GULFがAISと統合した」と書かれることがありますが、正確には違います。GULFが統合したのはIntouch Holdingsで、そのIntouchがAIS株を持っていました。現在GULFはAIS株を直接持つ形になっています。 その比率は40.44%(2026年8月20日時点)。2位はシンガポールのSingtelで19.10%です。
(出典:Shareholder Structure|AIS公式サイト)

会社自身の見通し

会社は、2026年の売上とEBITDAは12〜15%増えるという見通しを示しています。

根拠として、2026年の下半期に約700MWが新しく商業運転に入る予定だと説明しています(太陽光・蓄電池623MW、チェンマイのごみ発電10MW、屋根置き太陽光60〜70MW)。

そして実際に、9/1、太陽光2件(設備容量250.1MW)が商業運転を開始しました。年内にさらに4件・235.6MWが続く予定です。
(出典:Kaohoon International|2026-09-01)

計画が言葉だけで終わっていない、という点は確認できます。


ニュース②:データセンターを「10倍」にする計画

GULFがいま力を入れているのが、データセンターです。

なぜ民間の発電会社がやるの?

データセンターの最大の課題は電気です。AI向けのデータセンターは1棟で小さな町に匹敵する電力を使うため、安定した電気を自前で用意できるかどうかが、事業を始められるかどうかを分けます。だから発電会社が有利になります。

5年で1,400億バーツ投じ、200MW→約2,000MWへ

2026年6月、BloombergがGULFの計画を報じました。

  • 今後5年で1,400億バーツ(約43億ドル)を、AI・クラウド関連のインフラに投じる
  • データセンターの容量を現在の約200MWから約2,000MWへ拡大する
  • 資金は、営業キャッシュフロー、社債、銀行借入で調達する

CFO(最高財務責任者)のユパピン氏は、次のように述べています。

「AIとクラウドは、当社にとって大きな成長機会だと見ています。電力事業で築いてきた基盤と専門性が、この分野へ広がっていくうえで大きな強みになります」
(出典:Bloomberg|2026-06-04)

※この記事の一次情報は有料のBloombergです。無料で読めるものとして、w.mediaにも記事が掲載されています。

さらに2026/7/24には、データセンター用の子会社を2社(Gulf Edge Data Center 03・04)新しく設立しています。
(出典:Kaohoon International|2026-07-24)

GSA(サムットプラカーン、25.6MW)

計画だけでなく、実物もあります。

GULFがSingtel(シンガポール)とAISと組んで運営しているGSAというデータセンターが、バンコクの南のサムットプラカーン県で動いています。

ここに、アジア開発銀行(ADB)が9億バーツ(約2,680万ドル)のグリーンローンを出しました。

アジア開発銀行(ADB)とは?

アジア・太平洋地域の開発のためにお金を貸す国際機関です。日本が最大級の出資国で、歴代総裁も日本人が務めてきました。営利企業ではないため、環境や社会への影響を厳しく審査したうえで融資します。

グリーンローンとは?

環境によい事業に使い道を限定した融資のことです。

ADBは、これが 「タイ国内でも、この地域でも、データセンター分野への初めての融資」 だと説明しています。施設の仕様も公表されています。

  • 容量 25.6MW
  • Tier III(稼働率99.982%。年間の停止時間が約1.6時間に収まる設計水準)
  • LEED ゴールド(建物の環境性能の国際認証)
  • PUE 1.4(電力の使用効率。1.0に近いほど、冷房などの無駄が少ない)
    (出典:ADB|2025-08-25)

また、GULFが組む相手も海外勢です。GULFのデジタル部門「Gulf Edge」は、2026年1月にGoogle Cloudと提携しました。タイ国内にデータを置いたまま、GoogleのAIサービスを使えるようにする、という内容です。
(出典:DataCenterDynamics|2026-01-22)

Microsoft、Oracle、Nvidiaとも協業しており、世界のクラウド大手が、タイでの拠点としてGULFを選んでいるという構図です。

◼️これは借金でつくる事業です
発電所もデータセンターも、建てるのに巨額のお金が先に出ていきます。

6月末時点で、GULFの純有利子負債(借金から手元の現金を引いたもの)は自己資本の1.06倍。3か月前(1Q26)の0.91倍から増えています。

純有利子負債・自己資本とは?

「自分のお金に対して、借りているお金がどれくらいあるか」を表す数字です。1.06倍は「自分のお金と同じくらい借金がある」状態です。 設備をつくる商売では珍しくありませんが、金利が上がると利息の負担が重くなるため、そこは見ておく必要があります。


決算が良かったのに、株価は下がった

ここは正直に書いておきます。コア利益が過去最高だったのに、8月のGULFの株価は下がっています。

7月末に66バーツ台だった株価は、決算後もじりじりと下げ、9月2日には61.25バーツまで下がりました。1か月あまりで約8%の下落です。

前回のHANAが決算の翌営業日に+22%跳ねたのとは、まったく違う動き方です。

ただし、9月4日以降は3営業日続けて戻し、9月9日には62.75バーツまで回復しています。下げ止まったのか、一時的なものなのかは、まだ分かりません。

理由として現地で挙げられていたのは、主に次の2つです。

  • 金利の上昇 — 借金の多い会社は、金利が上がると利息の負担が増えます
  • データセンターへの規制報道 — 電力や水の使い方をめぐる政策議論が出たこと

「良い決算=株価が上がる」ではありません。 株価は「これから」を先に織り込んで動きます。良い決算がすでに予想されていれば、発表されても上がりません。逆に、金利や規制のように会社の外側にある要因で下がることもあります。
わたしはここを、1番勘違いしやすいところだと思っています。でも、やっているビジネスが面白くて良い決算を出す会社は、株価が伸びるかもしれないと期待したくなりますよね。(^^;)


これから見ておきたいこと

  • 下半期に予定されている約700MWの商業運転 — 9/1の太陽光2件に続くかどうか
  • 純有利子負債/自己資本の1.06倍と、金利の動き — 借金で設備をつくる会社なので、ここは継続して見たいところです
  • 2026年7〜9月期の決算(発表は11月ごろ) — 下期の新規稼働が数字に出てくるか
  • AISの業績 — GULFのコア利益の3分の1以上がAIS由来なので、AISが崩れるとGULFにも効きます。

ここまで書いておいて何なのですが、わたしはまだGULFを買っていません。

理由はお金です。いまHANAに入れているのは5,000バーツほど。この規模で2銘柄に分けると、どちらも中途半端になります。それなら1銘柄に集中して、値動きの理由を自分で説明できるようになるほうが先だと考えました。

前回、HANAを高値で買って、安値では買えなかったばかりですし。(^^;)

とはいえ、いま2番目に気になっている銘柄です。HANAを売却したときに、次の行き先として考えることになると思います。

だから上に並べた項目は、他人事の観察リストではなく、そのときの判断材料として見ています。


ちなみに:GULFは「Global Small Cap」には入っていません

前回のHANAの記事で、MSCI Global Small Cap指数への組み入れ発表が株価を動かした、という話を書きました。「では、GULFはどうなのだろう?」と思って調べたので、最後にその話を書きます。

答えは、入っていません。理由は、Small Cap指数に入る資格がないほど大きいからです。

前回のHANAが8月に入ったのは、MSCI Global Small Cap指数(小型株)のほうでした。
GULFはその一つ上、MSCI Global Standard指数(大型・中型株)に入っています。
これをタイの分だけ切り出したのが MSCI Thailand Indexです。

MSCI Thailand Index(2026/8/31基準)の上位10銘柄

順位銘柄比率
1デルタ・エレクトロニクス20.15%
2PTT10.57%
3AIS(アドバンスト・インフォ・サービス)8.90%
4タイ空港公社6.47%
5CPオール6.20%
6GULF(ガルフ・デベロップメント)6.13%
7バンコク・ドゥシット・メディカル5.46%
8SCC(サイアムセメント)4.88%
9PTTEP(PTT探鉱生産)4.59%
10クルンタイ銀行3.92%

(出典:MSCI Thailand Index(PDF))

タイ株全体で6番目です。3位のAISと合わせると、GULFグループはタイ株の指数のなかでかなりの存在感を占めていることになります。

動く金額のケタが違います。同じ「MSCIの指数に入っている」でも、規模が違うと影響もまったく違います。2026年5月のMSCIの見直しでは、GULFから約30億バーツの資金が流出すると試算されていました。
(出典:Kaohoon International|2026-05-13)

小型株指数への新規採用で動く金額は、これよりずっと小さくなります。

ここから言えることは、「MSCIに入った」というニュースを見たときは、どの指数か(大型か小型か) と その中でどれくらいの比率かを確かめる。同じ言葉でも、意味する金額がまったく違います。


在タイの方向けメモ

  • 注文は原則「GULF-R」で。 末尾に「-R」が付いた銘柄は NVDR(エヌブイディーアール) といって、外国人でも普通に売買できる仕組みです。「-R」なしの株(L株)は、外国人の保有枠がいっぱいだと 配当を受け取れないことがあります。
  • タイの居住者は、SETで売却した上場株式の値上がり益は非課税です。配当だけ10%が源泉徴収(自動で天引き)されます。
  • GULFは配当を出す会社です。SET(タイ証券取引所)の公式ページでは、直近の配当実績(1株あたり3.25バーツ)にもとづく配当利回りが5.2%と表示されています(2026年9月時点)。ただし配当は会社の判断で変わります。

※本記事は公開情報にもとづく情報提供であり、投資助言・税務助言ではありません。筆者は証券アナリスト・投資助言業者・税理士ではありません。
株価・財務数値は各出典の取得時点の値で、最新の値とは異なる場合があります。
特定の投資信託・銘柄の売買を推奨するものではありません。税務の取扱いは滞在日数・ビザの種別・他の所得・日本側の居住者判定によって大きく変わるため、実行前に必ずタイおよび日本の税理士にご確認ください。売買のご判断はご自身の責任でお願いします。

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